NGSを用いた染色体解析における多核胚の評価 (第61回 日本生殖医学会)
〇吉貝香里1、松田有希野1、加藤武馬2、加藤麻希2、新井千登勢1、浅井菜緒美1、中野英子1、倉橋浩樹2、澤田富夫1

1さわだウィメンズクリニック、2藤田保健衛生大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門

目的

Time-lapse cinematographyの導入により、胚発生過程の連続撮影が可能となり、それに伴い多核胚が頻繁に観察されるようになった。多核胚は、その発生速度が遅いことや、高確率で染色体異常が認められるとの報告がある。そこで我々は、Embryo ScopeTM  ( ES ) で形態観察し、その後廃棄となった多核胚のNext Generation Sequence ( NGS ) 解析を行ったのでその結果を報告する。

 

対象・方法

2013年1月~2015年1月に採卵し、ESで形態観察した8症例のうち2細胞期~8細胞期において多核を有する胚で、妊娠成立後に廃棄となった胚盤胞12個を患者の同意を得てNGSを用いて染色体解析を行った。患者の平均年齢は33.9±4.0歳であった。

 

結果

12個の胚盤胞のうち、正倍数の核型を持つと考えられる胚は5個(41.7%)であった。その他の胚は、16番染色体の異常が4個と最も多く(57.1%)、また複数の染色体異常が認められる胚も4個(57.1%)であった。患者年齢の比較では正倍数胚と染色体異常胚の間で有意差はないものの、染色体異常胚の患者年齢が高い傾向にあった。

 

結論

今回の多核胚のNGS解析において、染色体異常を有する胚もあれば、40%程度であったが正倍数を持つと考えられる胚もあることから、多核の原因が必ずしも染色体異常にあるとは言えないと考えられる。16番染色体異常は、流産胎児染色体検査で高頻度に検出されるものである。今回の胚盤胞NGS解析段階でもこの染色体異常が散見された。その他の染色体異常を有する可能性があるが、それらの胚は胚盤胞まで到達せずに、発生停止胚となっているとも考えられる。以上より、多核胚は必ずしも移植から除外する必要性はないが、妊娠しても流産する可能性が含まれていることに留意する必要性があると考えられ、将来のPGSの重要性が指摘される。

 
2016.03.19
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