胚盤胞腔と培養液にみられる染色体核型の由来 (2018年 第36回 日本受精着床学会)
○吉貝香里1、松田有希野1、加藤武馬2、加藤麻希2、宮井俊輔2、新井千登勢1、鈴木篤智1、花井理沙1、中野英子1、倉橋浩樹2、澤田富夫1
1さわだウィメンズクリニック
2藤田保健衛生大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門

目的
TE生検は侵襲性が低く胚の着床に影響しないことが報告されているが、胚盤胞内部の液体である胞胚腔液(Blastocoele fluid:BF)を用いたより侵襲性の低い方法も着目されている。また近年、培養液に染みでたDNAを鋳型にした染色体解析が低侵襲のスクリーニング法として報告された。本研究では、BFや培養液由来のDNAは、TEの代替えサンプルとして用いられるか検討した。
方法
当院の凍結基準を満たさず廃棄となった胚盤胞、または凍結後廃棄となった初期胚から得られた胚盤胞36個を用い、患者同意を得て研究を行った。胚盤胞期のICM, TE, BF, 培養液を各々採取し、全ゲノム増幅後、次世代シーケンサーで染色体検査を行った。得られた結果からBF, 培養液が初期胚の染色体検査に有用か、また存在する核型の由来をICMとTEで比較した。
結果
全ゲノム増幅成功率はBF、培養液、ICM、TE各々63.6%、46.8%、97.8%、96.9%で、BF、培養液がICM、TEに比較し有意に低かった。また染色体解析の結果、BF、培養液はICMやTEと比較してノイズが高く核型判定が不能となる検体が多かった。さらにICMやTEとの核型比較解析の結果、BFとの一致率は63.2%、培養液では52.0%、BFと培養液での一致率は38.9%であった。BF・培養液にはICMまたはTEには持たない染色体異常が多く散見された。培養液の染色体解析の結果、受精卵がXYの際にXのコピー数が上がりYのコピー数が下がる傾向があり性染色体の相違が認められた。
考察
これらの結果からBF、培養液中のDNAはICMやTE複数の染色体に異常を持つためにアポトーシスした細胞に由来する可能性が高いと考えられる。培養液の性染色体の相違については、透明体より卵丘細胞が完全に除去されていない可能性もあり、更なる検討が必要と思われる。以上の結果より、BF、培養液による染色体検査は、侵襲性が低いという利点はあるが、胎児の核型を判定しているとは言い難く、また判定不能のケースが多いことから、実用性は低いことが考えられる。
2018.11.15
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