初期不規則分割胚の発生能は正常分割細胞の残存量から推測できる(2024年 第65回日本卵子学会)
渡辺 真一 冨田 麻莉 鈴木 篤智 松田有希野 吉貝 香里 中野 英子 澤田 富夫

【目的】
1細胞が3細胞以上に分割するdirect cleavageが胚盤胞発生率を低下させることが知られているが、direct cleavageには2細胞にならず直接3細胞以上に分割する場合(true direct cleavage, TDC)と、2細胞となった後早期(5時間以内)に片方の細胞が分割する場合(rapid cleavage, RaC)があり、第一分割でこれらが見られた場合、後者の胚は早期分割しなかった細胞が存在するため前者と比較して胚盤胞発生率が高いことを我々は過去に報告した(2023ESHRE)。今回、第二分割までにこれらの動態が見られた胚を分類して発生能を比較し、その分類が胚評価に利用可能か検討した。

【方法】
2021-22年に当院で採卵され、胚盤胞培養された正常受精胚1,327個を対象とした。第二分割までにTDCまたはRaCが見られた胚について、第一分割TDC群、第二分割TDC群、第一分割RaC群、第二分割RaC群に分類して、良好胚盤胞(Gardner分類4BC以上)発生率を比較した。なお、複数の細胞にTDCまたはRaCが見られた胚、および細胞の融合が見られた胚は検討から除外した。

【結果】
良好胚盤胞発生率は、第一分割TDC群5.6% (6/108), 第二分割TDC群34.6% (27/78), 第一分割RaC群33.2% (103/310), 第二分割RaC群50.0% (27/54)であり、第一分割RaC群と第二分割RaC群は第一分割TDC群より有意に高かった(P<0.05)。

【結論】
TDCを起こした細胞は全てTDC由来となり、RaCでは関連した細胞のうち50%がRaC由来となる。各不規則分割に由来しない正常分割細胞の残存量を考えると、第一分割TDC胚は0%、第二分割TDC胚と第一分割RaC胚はいずれも50%、第二分割RaC胚は75%となる。良好胚盤胞発生率もおおむねその量に対応していることから、不規則分割の発生段階や種類を観察して、正常分割細胞量を把握することで胚の発生能を推測することが可能である。

2024.06.27
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