NGSを用いたTE・ICM間における核型一致率の比較 (第58回 日本卵子学会)学術奨励賞口演部門受賞
吉貝香里1,2 加藤武馬2 松田有希野1,2 新井千登勢1 浅井菜緒美1 中野英子1

澤田富夫1 倉橋浩樹2

1さわだウィメンズクリニック、2藤田保健衛生大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門

 

目的

近年、PGSやPGDの生検に胚盤胞期における栄養外胚葉(TE)が用いられることが多い。割球生検と比較してTE生検が胚の着床に影響しないことが報告されているが、TEで観察された染色体核型が内細胞塊(ICM)を反映していないという報告もある。(これまでFISHやアレイCGHを用いて、ICM/TEの染色体核型の比較解析が行われてきたが、報告毎に結果が異なり、統一した見解は得られていない。)そこで我々は、モザイク型染色体異常や微細な構造異常の検出が可能なNGSを用いて、同胞TEとICMを比較し、TE生検が胚盤胞期におけるICMの核型を反映しているか解析を行った。

対象・方法

2010年~2015年までに採卵後凍結し、廃棄となった18症例24個の胚盤胞を用い、患者同意を得て研究を行った。患者年齢は34.5±3.6歳であった。TEを3時の位置で1か所採取(TE1)、6時または12時の位置で採取(TE2)、さらにICMをそれぞれ採取し、核型の比較検討を行った。

結果

ICMとTEの核型一致率は52.9%であった。そのうち、ICM/TEともに正倍数を示す胚は12個 (35.3%) であった。核型が不一致となり、どちらかに染色体異常を有した胚はモザイク異常であり、TEで検出された異常がICMで検出されないものは32.4%、逆にICMで検出された異常がTEで検出されないものは14.7%であった。

同胞TE間の比較では、一致率は50.0%であり、不一致核型にはモザイク異常が認められた。

結論

ICMと3時の位置のTEのそれぞれの染色体解析で、約半数の胚で核型が一致しないことが明らかとなった。モザイク異常はICMよりもTEに多く見られたことから、初期胚で染色体異常が発生したモザイク異常を有する細胞の多くは、TEへと分化する傾向がある。または、ICMにモザイク異常がある場合には、異常細胞が細胞死するか、胚盤胞まで到達せずに発生停止となっている可能性も考えられる。PGS/PGDにおいて、TEでモザイク型の染色体異常が見られたときに、ICMでは正倍数性の核型を持つ可能性もあるため、移植する胚の決定には、モザイク染色体異常を持つ胚について、慎重に扱う必要があることが示唆された。

 
2017.03.19
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