Direct cleavageと胚盤胞発生率および妊娠率との関連: コンパクションに着目した検討(2021年 第62回 日本卵子学会)
渡辺 真一 冨田 麻莉 鈴木 篤智 松田 有希野 吉貝 香里 中野 英子 澤田 富夫

さわだウィメンズクリニック

 

【目的】

初期発生でDirect cleavage(1細胞が3細胞以上に分割する現象、以下DC)が見られた胚は胚盤胞発生率が低下するが胚盤胞に到達すれば移植妊娠率は低下しないとの報告がある。この関連要因として我々はタイムラプス観察で時折見られるコンパクションから一部の割球が除外される現象に着目した。DCの有無と除外割球数、胚盤胞発生率および移植妊娠率の関連を検討した。

 

【対象と方法】

2018-19年にEmbryoScope(Vitrolife)で培養し、桑実胚以上に発育した胚578個を対象とした。Gardner分類4以上の胚盤胞を凍結した。対象胚を第一・第二分割のタイムラプス観察により正常分割群とDCが見られた胚(DC群)に分類し、桑実胚形成時にコンパクションから除外された割球数、培養成績、移植成績を比較した。

 

【結果】

正常分割群は286個、DC群は292個であった。平均除外割球数はそれぞれ0.76個, 3.55個で、DC群が有意に多かった(P<0.01)。

胚盤胞発生率はそれぞれ95.8%(274/286), 86.3%(259/292)、凍結率は84.5%(239/283), 65.8%(181/275)でいずれも正常分割群が有意に高かった(P<0.01)。

単一胚盤胞移植妊娠率はそれぞれ31.6%(25/79), 32.4%(11/34), 流産率は24.0%(6/25), 27.3%(3/11)でいずれも有意差を認めなかった。

 

【結論と考察】

DC胚では胚盤胞発育過程でコンパクションから除外される割球が増加した。これにより生存細胞量が減少して胚盤胞発生率が低下することが推測された。しかしDCの有無や除外割球の増加は移植妊娠率と流産率には影響しなかった。

我々は過去にDCは胚盤胞到達後の正倍数率を低下させないことを報告した(2020卵子学会)。今回の結果もDCの有無は移植妊娠率に影響していない。割球の除外はDCで発生した重度の染色体異常割球の発育停止であり、胚盤胞到達後の正倍数性には関連していないことが推察された。

 
2021.07.09
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