卵子の大きさと染色体異常の有無 (第37回 受精着床学会)
松田 有希野1)、吉貝 香里1)、加藤 武馬2)、宮井 俊輔2)、新井 千登勢1)、鈴木 篤智1)、冨田 麻莉1)、中野 英子1)、澤田 富夫1)、倉橋 浩樹2)

1)さわだウィメンズクリニック、2)藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門

 

【目的】

卵子のサイズが小さい、または囲卵腔が広い卵子は染色体異常である可能性が高いという報告がある。今回、私たちはEmbryo Scope®の画像結果と、NGSによる染色体解析結果を元に、卵子のサイズが染色体異常と関連しているか、また、卵子のサイズが年齢とともに変化するか検討した。

【方法】

2013年5月~2018年6月までに採卵し、患者同意の得られた49症例97個の胚を対象とした。卵子のサイズは、透明帯を含む卵子全体と、卵子細胞質の直径を測定した。NGSによる染色体解析結果から、正倍数胚群(N群31個)、構成型異常胚群(C群37個)、モザイク異常胚群(M群11個)に分類した。

また、年齢による影響を調べるため、34歳以下(a群)、35~38歳(b群)、39歳以上(c群)に分けて比較検討した。

【結果】

透明帯を含む卵子全体径は、N群158.1±6.6㎛、C群161.4±6.4㎛、M群159.5±5.2㎛であり、C群はN群より有意に大きかった。また、卵子細胞質径は、N群116.1±3.4㎛、C群116.9±2.8㎛、M群115.6±4.5㎛であり、有意差はなかった。年齢別では、卵子全体径は、a群158.3±6.5㎛、b群160.3±5.6㎛、c群162.5±6.5㎛であり、c群はa群より有意に大きかった。また、卵子細胞質径は、a群115.9±3.5㎛、b群116.3±3.1㎛、c群117.4±3.3㎛であり、有意差はなかった。さらに、卵子全体径が染色体異常に由来しているかを年齢別にN群、C群、M群で検討したところ、34歳以下N群156.7±6.3㎛、C群162.3±5.8㎛、35~38歳N群159.2±4.5㎛、C群159.8±6.2㎛、M群162.9±4.4㎛、39歳以上N群161.8±7.3㎛、C群161.9±6.9㎛、M群163.7±2.2㎛であり、34歳以下でC群はN群より有意に大きかった。

【考察】

卵子細胞質のサイズは染色体の状態や年齢による有意差はない。しかし、囲卵腔が広く、卵子全体が大きい胚は34歳以下では構成型異数胚である可能性が高いことがわかった。よって、34歳以下の患者の場合、卵子全体径が160㎛を超えてくる卵子は、凍結あるいは移植の順位を下げることが望ましい。
2019.08.05
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