初期不規則分割は胚染色体解析結果に影響するか -Direct cleavageとReverse cleavage-(第63回 日本卵子学会学術集会(シンポジウム))
渡辺 真一

 

胚の動態から妊孕性を推測する試みが数多く報告されているが、我々は特に不規則な初期分割動態に着目している。Direct cleavage(以下DC)と呼ばれる1細胞が3細胞以上に分割する動態が知られており、これによる染色体分配異常が懸念される。発生初期のDCは胚盤胞発生率を大きく低下させる。しかしDCを呈しても胚盤胞に到達した胚であれば移植妊娠成績への影響はないという報告は多い。我々はDCの胚盤胞正倍数性への影響を探るため、患者同意が得られた廃棄胚盤胞を用いて初期動態とNGS解析結果の関連を検討したところ、第二分割まで正常であった胚盤胞と第二分割までにDCが見られた胚盤胞の正倍数率に有意差は見られなかった(2020卵子学会)。

ではなぜDCは胚盤胞発生率を低下させるのに胚盤胞正倍数性には影響しないのか? 原因を探るべく、我々はDCで発生した割球のその後の「運命」を見ることとした。Day2胚の割球を1個ずつ、その後胚盤胞を形成しているかを観察したところ、第二分割まで正常であった割球は88%が胚盤胞を形成したのに対し、第一分割のDCで発生した割球の胚盤胞形成率は29%であった。加えて、第二分割時に2細胞のうち1個は正常分割だが1個はDCを呈した胚について両者を区別して同様に観察したところ、正常分割割球の胚盤胞形成率71%に対してDC由来割球のそれは34%と概ね同様であり、第二分割までのDCで発生した割球の約7割は胚盤胞を形成していなかった(2020中部生殖医学会)。

これらのことから、DCで発生した染色体異常細胞はアポトーシスや細胞接着能の欠損等により多くが胚盤胞形成から除外されており、胚盤胞到達後の正倍数性には影響がないことが推測された。実際の移植胚選択においては、DC胚は初期胚移植から除外し、胚盤胞に到達すれば通常通り移植を行うことが推奨されよう。

初期不規則分割としてもう一つ、Reverse cleavage(以下RC)と呼ばれる一旦分割した細胞が融合する動態が知られるが、RCの胚発生や正倍数性への影響については過去の報告でも意見の一致をみていない。我々も検討を行ったところ、第二分割まで正常分割の胚に比して、第二分割までにRCが見られた胚の胚盤胞発生率と初期胚移植妊娠率は低下したが、胚盤胞移植妊娠率は低下しなかった(本学術集会一般演題にて報告予定)。また、胚盤胞正倍数率は第二分割まで正常であった胚よりRC胚が有意に高いという不可解な結果となった(2020卵子学会)。現在我々はRCについて、正常に分割した割球が融合する「真のRC」と、DCの後に起こる「見かけのRC」があると考えている。これが未だ不明瞭なRCの機序や影響を解き明かす鍵になることを期待している。
2022.05.31
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