タイムラプスモニタリングで胚発生能と正倍数性はどこまで評価できるか(第38回 日本受精着床学会(ワークショップ))
渡辺 真一1 吉貝 香里1 冨田 麻莉1 鈴木 篤智1 松田 有希野1
宮井 俊輔2 加藤 武馬2 中野 英子1 倉橋 浩樹2 澤田 富夫1
1 さわだウィメンズクリニック
2 藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門
近年のタイムラプスモニタリングインキュベータの普及に伴い、胚の連続的観察により胚発生能および正倍数性を推測する試みが数多く行われている。第一分割時間、コンパクション時間、胚盤胞到達時間といった事象の発生時間による評価、また初期分割動態、コンパクション時細胞数、胚盤胞の収縮といった形動態学的評価が報告されており、それらによる妊孕性の評価については多くのエビデンスが得られているが、正倍数性の評価が可能かどうかはいまだ議論が続いている。
その中で我々は初期分割動態に着目した。初期分割で1細胞が3細胞以上に分割する、いわゆる"direct cleavage"、一旦分割した細胞が融合する"reverse cleavage"といった不規則な分割を呈した胚は胚盤胞到達率が低いことが報告されているが、そうした胚が胚盤胞に到達した場合の移植妊娠率は正常な初期分割であった胚盤胞の妊娠率と同等であるとの報告も見られる。
我々の検討では、第一あるいは第二分割で不規則な分割を呈した胚は正常初期分割胚と比較して初期胚移植妊娠率が有意に低率であった(14.4% vs 22.4%)が、そうした胚が胚盤胞に到達した場合の妊娠率は同等であり(31.5% vs 32.8%)、さらに患者同意を得た廃棄胚盤胞のNGS解析を行ったところ初期不規則分割胚の正倍数率は初期正常分割胚と比較して有意に高率となった(54.3% vs 32.1%)。すなわち、初期分割動態は初期胚移植の胚選択には有用だが、胚盤胞到達後の妊孕性・正倍数性は評価できなかった。言い換えれば、初期分割が不規則であった胚盤胞も初期分割正常胚盤胞と同様に移植に用いることが可能であると示された。
不規則な初期分割は染色体分配異常を起こすと考えられているが、そのような胚が胚盤胞に到達する過程で異数性細胞の除外など修正機能が働いていることを示唆する報告も最近ではなされている。今回、上記のような初期分割動態による胚の評価の詳細をお伝えしたい。
宮井 俊輔2 加藤 武馬2 中野 英子1 倉橋 浩樹2 澤田 富夫1
1 さわだウィメンズクリニック
2 藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門
近年のタイムラプスモニタリングインキュベータの普及に伴い、胚の連続的観察により胚発生能および正倍数性を推測する試みが数多く行われている。第一分割時間、コンパクション時間、胚盤胞到達時間といった事象の発生時間による評価、また初期分割動態、コンパクション時細胞数、胚盤胞の収縮といった形動態学的評価が報告されており、それらによる妊孕性の評価については多くのエビデンスが得られているが、正倍数性の評価が可能かどうかはいまだ議論が続いている。
その中で我々は初期分割動態に着目した。初期分割で1細胞が3細胞以上に分割する、いわゆる"direct cleavage"、一旦分割した細胞が融合する"reverse cleavage"といった不規則な分割を呈した胚は胚盤胞到達率が低いことが報告されているが、そうした胚が胚盤胞に到達した場合の移植妊娠率は正常な初期分割であった胚盤胞の妊娠率と同等であるとの報告も見られる。
我々の検討では、第一あるいは第二分割で不規則な分割を呈した胚は正常初期分割胚と比較して初期胚移植妊娠率が有意に低率であった(14.4% vs 22.4%)が、そうした胚が胚盤胞に到達した場合の妊娠率は同等であり(31.5% vs 32.8%)、さらに患者同意を得た廃棄胚盤胞のNGS解析を行ったところ初期不規則分割胚の正倍数率は初期正常分割胚と比較して有意に高率となった(54.3% vs 32.1%)。すなわち、初期分割動態は初期胚移植の胚選択には有用だが、胚盤胞到達後の妊孕性・正倍数性は評価できなかった。言い換えれば、初期分割が不規則であった胚盤胞も初期分割正常胚盤胞と同様に移植に用いることが可能であると示された。
不規則な初期分割は染色体分配異常を起こすと考えられているが、そのような胚が胚盤胞に到達する過程で異数性細胞の除外など修正機能が働いていることを示唆する報告も最近ではなされている。今回、上記のような初期分割動態による胚の評価の詳細をお伝えしたい。
2020.09.08
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