コンパクションからの割球除外によって胚盤胞の正倍数率が改善されることはない(2021年 第39回日本受精着床学会)
渡辺 真一1 吉貝 香里1 冨田 麻莉1 鈴木 篤智1 松田 有希野1
宮井 俊輔2 中野 英子1 倉橋 浩樹2 澤田 富夫1
1 さわだウィメンズクリニック
2 藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門
【目的】
初期発生でDirect cleavage(1細胞が3細胞以上に分割する現象、以下DC)が見られた胚では染色体分配異常により胚盤胞発生率が低下するとの報告は多いが、我々の検討では、DC胚が胚盤胞に到達すれば正倍数率は非DC胚盤胞と同等であった(2020卵子学会)。その理由として、タイムラプスモニタリングで時折観察されるコンパクションからの割球除外による異数性細胞排除が指摘されている。本報告では、初期分割動態と割球除外との関連と、割球除外が正倍数率やモザイク率に及ぼす影響を検討した。
【対象と方法】
2013-18年に採卵されEmbryoScope(Vitrolife)で培養された胚のうち、患者同意を得た廃棄胚盤胞89個を対象として、タイムラプス撮影画像から第一・第二分割正常胚(正常分割群)と第一または第二分割でDCが見られた胚(DC群)に分類し、コンパクション時に除外された割球数を記録した。また対象胚にはTE生検・NGS解析を行った。
【結果】
正常分割群47個、DC群42個であった。平均除外割球数はそれぞれ0.68個、3.40個で、DC群で有意に多かった(P<0.01)。正常分割群のNGS解析結果は正倍数性16個(34.0%)、異数性22個(46.8%)、モザイク9個(19.1%)であった。平均除外割球数はそれぞれ0.69個, 0.5個, 1.11個であり有意差はなかった。DC群のNGS解析結果は正倍数性18個(42.9%)、異数性20個(47.6%)、モザイク4個(9.5%)であった。平均除外割球数はそれぞれ2.89個, 3.55個, 5.0個であり有意差はなかった。なお正常分割群とDC群の正倍数率、モザイク率に有意差はなかった。
【結論】
DCが見られた胚はコンパクションから除外される割球が増加したが、DCの有無に関わらず除外割球数と染色体解析結果は関連しなかったことから、割球除外は重度の染色体異常細胞が胚発生から排除される現象であり、これによる異数性の改善やモザイク率の低下は期待できないと考えられた。
宮井 俊輔2 中野 英子1 倉橋 浩樹2 澤田 富夫1
1 さわだウィメンズクリニック
2 藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門
【目的】
初期発生でDirect cleavage(1細胞が3細胞以上に分割する現象、以下DC)が見られた胚では染色体分配異常により胚盤胞発生率が低下するとの報告は多いが、我々の検討では、DC胚が胚盤胞に到達すれば正倍数率は非DC胚盤胞と同等であった(2020卵子学会)。その理由として、タイムラプスモニタリングで時折観察されるコンパクションからの割球除外による異数性細胞排除が指摘されている。本報告では、初期分割動態と割球除外との関連と、割球除外が正倍数率やモザイク率に及ぼす影響を検討した。
【対象と方法】
2013-18年に採卵されEmbryoScope(Vitrolife)で培養された胚のうち、患者同意を得た廃棄胚盤胞89個を対象として、タイムラプス撮影画像から第一・第二分割正常胚(正常分割群)と第一または第二分割でDCが見られた胚(DC群)に分類し、コンパクション時に除外された割球数を記録した。また対象胚にはTE生検・NGS解析を行った。
【結果】
正常分割群47個、DC群42個であった。平均除外割球数はそれぞれ0.68個、3.40個で、DC群で有意に多かった(P<0.01)。正常分割群のNGS解析結果は正倍数性16個(34.0%)、異数性22個(46.8%)、モザイク9個(19.1%)であった。平均除外割球数はそれぞれ0.69個, 0.5個, 1.11個であり有意差はなかった。DC群のNGS解析結果は正倍数性18個(42.9%)、異数性20個(47.6%)、モザイク4個(9.5%)であった。平均除外割球数はそれぞれ2.89個, 3.55個, 5.0個であり有意差はなかった。なお正常分割群とDC群の正倍数率、モザイク率に有意差はなかった。
【結論】
DCが見られた胚はコンパクションから除外される割球が増加したが、DCの有無に関わらず除外割球数と染色体解析結果は関連しなかったことから、割球除外は重度の染色体異常細胞が胚発生から排除される現象であり、これによる異数性の改善やモザイク率の低下は期待できないと考えられた。
2021.07.29
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