Evaluation of artificial intelligence using time-lapse images of IVF embryos to predict live birth(2021年5月 Reprod Biomed Online)
澤田祐季1 佐藤剛1 長屋雅士2 齋藤知恵子1 吉原紘行1 伴野千尋1 松本洋介1
松田有希野3 吉貝香里3 澤田富夫3 浮田宗伯2 杉浦真弓1
1名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学
2豊田工業大学大学院工学研究科 知能情報メディア研究室
3さわだウイメンズクリニック
【目的】
近年、形態学的な評価に加えてタイムラプスシネマトグラフィ(TLC)を用いた動態学的評価も用いられているが、現状、生児獲得に至る胚を十分には予測できていない。PGT-Aに関しては、胚生検により胚にダメージを与えてしまう可能性も示唆されている。そこで我々はTLCにより得られた胚画像を、人工知能:AIによって解析することで、生児獲得に至る可能性の高い胚を非侵襲的に選択する方法の確立を目指した。
【方法】
名古屋市立大学病院及びさわだウイメンズクリニックで生殖補助医療を受け、本研究に同意を得た患者から得た胚を対象とした。AIによる解析は豊田工業大学にて行った。TLC解析にて10~15分間隔で撮影された移植胚470個から、1つの胚あたり約70~700枚、計140000枚の画像を用い、それぞれの画像に生児獲得成功または不成功の正解のみを与えたうえで、ディープラーニングさせた。そして作成されたAIが算出した各画像の成功予測値を加重平均した最終的な各胚の成功予測値で、生児獲得を予測できるかを後方視的に検討した。(AIにおける従来の機械学習は人間が特徴を指定するのに対して、ディープラーニングではAIがデータから自動的に特徴を抽出することができる。)
ディープラーニングによって作成されたAIの画像認識能力は非常に高いが、どのような特徴を根拠に判断したのかは不明である。そこで我々は判断根拠を可視化できるAttention Branch Networkというネットワークを用い、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことも試みた。また良好胚、不良胚に分類し、形態学的な胚評価とAIによる胚評価の関連についても検討した。
【結果】
生児獲得成功胚群の方が不成功胚群よりも、採卵時の年齢が有意に低いものの、その他は生児獲得の有無で差はなかった。
また生児獲得成功胚群の方が不成功胚群よりも、成功予測値が有意に高い結果となった。
さらに成功予測値の生児獲得を予測する性能を評価するためROC曲線を作成し、算出したカットオフ値よりも成功予測値が高い胚は、低い胚よりも生児獲得胚の割合が有意に高く、さらに成功予測値が上昇するとその割合が増加する傾向も認められた。
AIが算出した成功予測値による評価と形態学的評価の関連については、一致度を表すkappa係数が低く、二つの評価はほぼ不一致と考えられた。またAIによる評価と形態学的胚評価を併用した場合、それぞれ単独で評価をした場合よりも、陽性的中率、陰性的中率が共に高くなった。
AIによる評価、形態学的評価がともに良好であった胚を優先的に移植し、形態学的評価が不良でもAIによる評価が良好である胚を移植した方が、生児獲得に至る確率が上昇する傾向にあった。
AIの判断根拠を可視化したが、AIが生児獲得成功や不成功を予測できた胚に共通する特徴を我々が認識できるまでには至らず、生児獲得の予測に有用な胚の特徴を見出すことはできなかった。しかし、全体を通して透明帯周辺にAIの注目が集まっている画像を多く認めたため、透明帯の厚みを計測し、生児獲得の有無やAIによる胚評価の違いで比較したが、有意差は認めなかった。
【結論】
これらの結果により、我々が作成したAIが算出した成功予測値は生児獲得の予測に有用であると考えられる。しかしその予測性能は、現在までに報告されているTLC解析によって得られるパラメーターによる生児獲得予測と同程度であり、現時点ではAIと形態学的評価を併用した胚選択法が最も精度が高いと示唆された。また本研究では、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことはできなかったものの、AIの評価と従来の形態学的評価の一致度が低かったことから、AIは従来の形態学的評価とは異なる観点で胚評価を行っている可能性が示唆された。
松田有希野3 吉貝香里3 澤田富夫3 浮田宗伯2 杉浦真弓1
1名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学
2豊田工業大学大学院工学研究科 知能情報メディア研究室
3さわだウイメンズクリニック
【目的】
近年、形態学的な評価に加えてタイムラプスシネマトグラフィ(TLC)を用いた動態学的評価も用いられているが、現状、生児獲得に至る胚を十分には予測できていない。PGT-Aに関しては、胚生検により胚にダメージを与えてしまう可能性も示唆されている。そこで我々はTLCにより得られた胚画像を、人工知能:AIによって解析することで、生児獲得に至る可能性の高い胚を非侵襲的に選択する方法の確立を目指した。
【方法】
名古屋市立大学病院及びさわだウイメンズクリニックで生殖補助医療を受け、本研究に同意を得た患者から得た胚を対象とした。AIによる解析は豊田工業大学にて行った。TLC解析にて10~15分間隔で撮影された移植胚470個から、1つの胚あたり約70~700枚、計140000枚の画像を用い、それぞれの画像に生児獲得成功または不成功の正解のみを与えたうえで、ディープラーニングさせた。そして作成されたAIが算出した各画像の成功予測値を加重平均した最終的な各胚の成功予測値で、生児獲得を予測できるかを後方視的に検討した。(AIにおける従来の機械学習は人間が特徴を指定するのに対して、ディープラーニングではAIがデータから自動的に特徴を抽出することができる。)
ディープラーニングによって作成されたAIの画像認識能力は非常に高いが、どのような特徴を根拠に判断したのかは不明である。そこで我々は判断根拠を可視化できるAttention Branch Networkというネットワークを用い、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことも試みた。また良好胚、不良胚に分類し、形態学的な胚評価とAIによる胚評価の関連についても検討した。
【結果】
生児獲得成功胚群の方が不成功胚群よりも、採卵時の年齢が有意に低いものの、その他は生児獲得の有無で差はなかった。
また生児獲得成功胚群の方が不成功胚群よりも、成功予測値が有意に高い結果となった。
さらに成功予測値の生児獲得を予測する性能を評価するためROC曲線を作成し、算出したカットオフ値よりも成功予測値が高い胚は、低い胚よりも生児獲得胚の割合が有意に高く、さらに成功予測値が上昇するとその割合が増加する傾向も認められた。
AIが算出した成功予測値による評価と形態学的評価の関連については、一致度を表すkappa係数が低く、二つの評価はほぼ不一致と考えられた。またAIによる評価と形態学的胚評価を併用した場合、それぞれ単独で評価をした場合よりも、陽性的中率、陰性的中率が共に高くなった。
AIによる評価、形態学的評価がともに良好であった胚を優先的に移植し、形態学的評価が不良でもAIによる評価が良好である胚を移植した方が、生児獲得に至る確率が上昇する傾向にあった。
AIの判断根拠を可視化したが、AIが生児獲得成功や不成功を予測できた胚に共通する特徴を我々が認識できるまでには至らず、生児獲得の予測に有用な胚の特徴を見出すことはできなかった。しかし、全体を通して透明帯周辺にAIの注目が集まっている画像を多く認めたため、透明帯の厚みを計測し、生児獲得の有無やAIによる胚評価の違いで比較したが、有意差は認めなかった。
【結論】
これらの結果により、我々が作成したAIが算出した成功予測値は生児獲得の予測に有用であると考えられる。しかしその予測性能は、現在までに報告されているTLC解析によって得られるパラメーターによる生児獲得予測と同程度であり、現時点ではAIと形態学的評価を併用した胚選択法が最も精度が高いと示唆された。また本研究では、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことはできなかったものの、AIの評価と従来の形態学的評価の一致度が低かったことから、AIは従来の形態学的評価とは異なる観点で胚評価を行っている可能性が示唆された。
2021.10.19
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