精子因子が異数性に与える影響 (第64回 日本生殖医学会)
鈴木篤智1)、吉貝香里1)、加藤 武馬2)、宮井 俊輔2)、松田有希野1)、新井千登勢1)、冨田麻莉1)、中野英子1)、倉橋 浩樹2)、澤田富夫1)
1)さわだウィメンズクリニック、2)藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門
目的
IVF/ICSIで受精後胚の発生停止や発育不良の原因として卵子因子だけでなく、精子因子の関与も考えられる。今回NGS解析に用いた胚の受精時の精液所見から精子因子が異数性に影響を与えているか検討した。
方法
研究同意を得られた廃棄胚をNGS解析に供した。143個の解析胚のうち正倍数胚59個、モザイク異数性胚26個を用いた。非モザイク異数性胚は卵子側の要因の影響が大きいといわれているため、今回の検討から除外した。正倍数胚の精液所見とモザイク異数性胚の媒精時の精液所見を比較検討した。またWHO基準で濃度と運動率に分けて検討した。精子濃度が15×10⁶/mlより低い群と高い群に分け、各群の正倍数胚の数、モザイク胚の数を比較検討した。運動率は40%未満と40%以上で検討した。有意差検定はt検定とFisherの正確確率検定を用いた。
結果
患者年齢を比較したところ、妻の年齢では正倍数胚とモザイク異数性胚で差はなかったが夫年齢では正倍数胚と比較してモザイク異数性胚で有意に若かった(36.8±5.6歳vs. 34.2±4.5歳 p<0.05)。正倍数胚とモザイク異数性胚では媒精時の精子濃度、運動精子濃度、奇形精子濃度において有意差は見られなかった。精液量は正倍数胚と比較してモザイク異数性胚で有意に多かった(2.8±1.2ml vs. 3.4±1.2ml p<0.05)。濃度の検討では精子濃度が15×10⁶/mlより低い群は高い群と比較して、有意差はないものの正倍数胚の数が減少する傾向が見られた(30.0% vs. 44.8%)。運動率では有意差はないが、40%未満の胚で正倍数胚の比率が減少する傾向にあった(31.6%vs. 43.4%)。
結論
少ない精子濃度と低い運動率が正倍数胚の数を減少させる要因である可能性が示唆された。
またモザイク異数性胚で精液量が多い症例がみられることから、精漿中の何らかの要因がモザイク異数性胚の発生に関与している可能性が示唆された。今後症例数を増やし、さらなる検討をしていきたい。
1)さわだウィメンズクリニック、2)藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門
目的
IVF/ICSIで受精後胚の発生停止や発育不良の原因として卵子因子だけでなく、精子因子の関与も考えられる。今回NGS解析に用いた胚の受精時の精液所見から精子因子が異数性に影響を与えているか検討した。
方法
研究同意を得られた廃棄胚をNGS解析に供した。143個の解析胚のうち正倍数胚59個、モザイク異数性胚26個を用いた。非モザイク異数性胚は卵子側の要因の影響が大きいといわれているため、今回の検討から除外した。正倍数胚の精液所見とモザイク異数性胚の媒精時の精液所見を比較検討した。またWHO基準で濃度と運動率に分けて検討した。精子濃度が15×10⁶/mlより低い群と高い群に分け、各群の正倍数胚の数、モザイク胚の数を比較検討した。運動率は40%未満と40%以上で検討した。有意差検定はt検定とFisherの正確確率検定を用いた。
結果
患者年齢を比較したところ、妻の年齢では正倍数胚とモザイク異数性胚で差はなかったが夫年齢では正倍数胚と比較してモザイク異数性胚で有意に若かった(36.8±5.6歳vs. 34.2±4.5歳 p<0.05)。正倍数胚とモザイク異数性胚では媒精時の精子濃度、運動精子濃度、奇形精子濃度において有意差は見られなかった。精液量は正倍数胚と比較してモザイク異数性胚で有意に多かった(2.8±1.2ml vs. 3.4±1.2ml p<0.05)。濃度の検討では精子濃度が15×10⁶/mlより低い群は高い群と比較して、有意差はないものの正倍数胚の数が減少する傾向が見られた(30.0% vs. 44.8%)。運動率では有意差はないが、40%未満の胚で正倍数胚の比率が減少する傾向にあった(31.6%vs. 43.4%)。
結論
少ない精子濃度と低い運動率が正倍数胚の数を減少させる要因である可能性が示唆された。
またモザイク異数性胚で精液量が多い症例がみられることから、精漿中の何らかの要因がモザイク異数性胚の発生に関与している可能性が示唆された。今後症例数を増やし、さらなる検討をしていきたい。
2019.11.12
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