ヒト胚初期不規則分割と染色体解析(第22回生殖バイオロジー東京シンポジウム)
渡辺 真一

胚の初期不規則動態として、1細胞が短時間のうちに3細胞以上に分割するdirect cleavage(DC)が知られる。DCは染色体の異常分配を招き胚盤胞発生率を低下させるが、胚盤胞に到達すれば移植妊娠率は低下しないとの報告は多い。
当院で染色体解析を行った胚盤胞(研究使用の同意を得た廃棄胚)を初期分割様式によって分類したところ、DCが見られた胚盤胞の正倍数率は初期分割正常胚盤胞と同等であった。なぜそうなるのか? 理由を探るため、初期分割後の割球がそれぞれその後胚盤胞を形成しているか否かをタイムラプス動画で観察すると、第二分割まで正常な割球は9割以上が胚盤胞を形成していたのに対し、第二分割までのDCで形成された割球は約5割しか胚盤胞を形成しておらず、この「異常割球の除外」によって胚は正常性を保っていると考えられた(Watanabe et al. F&S Science 2023)。しかしDC胚はリペアのためのコストとして「除外される分の細胞量」を支払うことになり、発育速度と胚盤胞のグレードが低下する。DC胚盤胞の移植妊娠率は低いとする報告も散見されるが、凍結基準が緩い場合そうした結果となるかもしれない。
一旦分割した割球が融合するreverse cleavage(RC)にもしばしば遭遇するが、RCの胚発生能や妊孕能への影響についてコンセンサスは得られていない。我々の検討では、RCが見られた胚盤胞の正倍数率は初期正常分割胚盤胞よりも有意に高い、という結果が出て解釈に苦しんでいる。RCには、正常分割後の融合で4倍体を形成する場合と、DC後の融合があると考えられる。後者の場合、異常分割細胞が融合により「修復」されているかも知れないと考え、融合細胞の胚盤胞形成率を調べたが、そのような結果は得られなかった(2023受着)。現在のところRCは4倍体形成、もしくはDC後の無意味な挙動であると認識せざるを得ない。
2023.09.25
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